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Thomasのカリフォルニア日記

日常の生活で感じたことを、徒然なるままに書き留めていきたいとおもいます。

iPS細胞!


現在、再生医療分野だけでなく、医学全体で注目されている「iPS細胞」の第一人者である山中伸弥教授が先日スタンフォード大学で講演をされました。ES 細胞・iPS 細胞研究に関しては以前の日記にも書きました。



“iPS細胞(人工多能性幹細胞)の現状”
山中伸弥 教授
(京都大学再生医科学研究所教授、グラッドストーン研究所教授)


今回の内容は主にiPS細胞の樹立までの経緯とiPS細胞作製の現状の問題点についての議論が主なテーマでした。
大阪大学で博士号取得後にポストドクトラルフェローとして所属していたカリフォルニア大学サンフランシスコ校で全くES細胞とは全く異なる研究(遺伝子欠損マウスの作製)をしていて、たまたまある一つの遺伝子をマウスから取り除くと分化の能力を失うということが分かったそうです。それ以来、細胞の分化に興味がでたそうです。このとき教授は本筋の研究がうまくいかなかったことにがっかりしたものの、山中氏は新たな研究分野(ES細胞の分化)に対する興味を得たそうです。

カリフォルニア大学サンフランシスコ校から大阪大学に帰ってきたときに臨床医として復帰し、PADという病気にかかってしまったとおっしゃってました。

Post American Disease...

つまり、日本の医学部独特の雰囲気(研究に関する上下関係ない活発な議論が全くない、など)にかなり悩まされたそうです。
これはやばいと、臨床ではなく研究にとどまるために就職活動をおこない、何とか奈良先端科学技術大学院大学に助教授として着任、「大人の体細胞からES細胞と同じ機能を持った細胞(iPS細胞)を作製する」という明確なゴールを掲げ、iPS細胞の研究をスタートしたそうです。

最も困ったことは大人マウスの体細胞に遺伝子を導入するだけでiPS細胞を作る、という無謀な研究を研究員がやりたがらなかったことだそうです。
何とか説得して研究を続けさせるのは非常に大変であったということです。

また、手法も普通の研究者からすると非常に無謀とも思えるアプローチ手法をとっていました。どのような遺伝子をいくつマウスに入れればiPS細胞になるのか誰もわからない状態で、山中グループは24個の導入遺伝子候補を得たそうです。普通の研究者ならそれを一つずつマウスに入れてiPS細胞ができるかどうか確かめるところです。というのは、マウスへの遺伝子導入は一度に普通3つくらいが限界(信頼筋の情報というやつです。)だからです。

実際多くの研究者がその方法で失敗していたそうです。しかし、山中グループは一度に24個全ての遺伝子をマウスに入れて、iPS細胞を作ることに成功したそうです。おそらく非常に確率の低いことだったと思います。ちなみに成功するまでに行った実験手法の改良は400回を超えていたようです(プレゼンテーションに実験手法その440、と書いてありました)。次に、この24個の遺伝子から一つずつ省いた23遺伝子(24通り)を導入して、うまくいかなかった遺伝子が必須のものという考え方で山中因子と呼ばれる4つの遺伝子を発見したそうです。


現在のiPS細胞の問題点は成功率と安全性です。

現在のiPS細胞の効率は数%と非常に低くなっています。
現在山中先生はこの問題点に関して様々な仮説(遺伝子の組換効率が悪い、阻害メカニズムがあるのでは?など)を立て、精力的に取り組まれているそうですが、いまだ大きな改善は見られていないそうです。

また、安全性も大きな問題です。
大人のマウスから作製したiPS細胞を成長・分化させて大人のマウスまでにすることはできますが、その途中で50%以上の確率でマウスに腫瘍(ガン細胞など)ができて、死んでしまっていたそうです。原因は山中因子の一つがガン関連遺伝子であること、遺伝子導入にウイルスを用いたことによる弊害などいくつかありますが、現在手法の改良でかなり腫瘍の発生率が下がってきているそうです。実際の臨床応用の際にはほぼ0%になっていないと、「再生医療を施すとガンになってしまいます」ということになりますので、これは非常に大きな問題です。しかし、山中先生はこの問題は世界中の様々なグループが解決策を試しており、技術的に解決されるのは時間の問題である、とコメントしていました。


現在は大人のヒトの皮膚細胞からiPSを作製して、ヒトでの臨床応用に向けた取り組みも始めているそうです。なんと、81歳の方から取った細胞をiPSに変換すると細胞自体が若返っていた(テロメアの長さが伸びていた)とのことで、若返りも夢ではないような可能性も示唆していました。


今まで聞いた中では最も英語プレゼンテーションのうまい日本人のひとりでした。発音がネイティブというわけでもないのに、非常に分かりやすく話し、ジョークなども織り交ぜ、非常に魅力的なスピーチでした。プレゼンテーションの終わったあとの拍手がいつまでもやまなかったのがまさにその証拠です。
「まるでノーベル賞をとったかのよう!」(友人談)。

また、一緒に聞いていた方と話をしていて、山中先生の業績に対する最大の貢献者は助教授として採用した奈良先端科学技術大学院大学での人だ!という結論になりました。

(T.M.)
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  1. 2009/02/04(水) 23:00:45|
  2. 研究
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人類のルーツを遺伝子で解明

スタンフォードの研究者たちが10年かけて、51の世界中の民族の遺伝子を調査することにより、人類がどこで生まれ、どのように広がっていったかを示すマップを作りました。
ヒトの遺伝子配列(ヒトゲノム)のなかにある650000箇所の遺伝子配列に関して比較を行って、どの程度遺伝子が似ているかを調査したそうです。

主な発見は以下。
・ 中近東の人種グループは一つだと思われていたが、いくつかに分かれた。
・ 中国人も南北でちょっと違う人種らしい。
・ 南米の人々はシベリアの人と似ていた。やはり、ベーリング海峡を渡ってきたのだろう。

080228maplegend_600w.jpg

    人類の遺伝子を基にした軌跡マップ

最も興味深かったのは、スタンフォード研究グループはこの遺伝子データを近々完全に公開するということでした。
完全に、ITのOSであるリナックスを初めとするオープンソースと呼ばれる開発の考え方と全く同じことを狙っているようです。
つまり、最初の論文はスタンフォード大学が発表。

それを利用した様々な大学の論文が積み重なる。

このデータがデファクトスタンダードに。

スタンフォードを中心に世界が回る。

スタンフォードすごい。
ということでしょう。

また、この情報は遺伝子が原因となる病気などの解明に非常に有効であると述べています。
最近、人種間で薬の効き方が違う、臓器移植後の拒絶反応の出かたが人種間で違うなどの知見が出てきていますが、このような違いがどの人種でどの程度違うのかを調べるのにもこのデータは有効では?と感じました。

参考サイト
http://med.stanford.edu/mcr/2008/gene-map-0227.html
  1. 2008/02/29(金) 02:11:33|
  2. 研究
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プロフィール

Thomas CA

Author:Thomas CA
Thomas
2004年生まれ。くま。
2年間、CA(カリフォルニア)を堪能して、現在は強敵K.M.に好かれるべく努力中。

T. M.
Thomas Familyあるじ。会社から派遣され、大学で研究していたのも今となっては泡沫の夢。現在は日本でお仕事中。お外で遊ぶのが大好き。

S. M.
Thomas Familyの元専業主婦。
3年間の専業主婦を終え、満を持して仕事に復帰してからはいっぱいいっぱいの日々が続く。

K. M.
Thomas Familyで一番のあばれんぼう娘。まだまだ人生経験は浅いものの、日本語を悪用し、他人のおもちゃを横取りするときは「じゅんばんこ♪」他人のご飯を横取りするときは「はんぶんこ♪」

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